■厭
孫晧にとって感情とは、臣下を御し、自らの権威を揺るがぬものにするための手段であり、道具であった。感情を繕うことこそが、人の上に立つことなのだと。そのため孫晧は、繕った感情を見透かそうと窺う臣下らの目を、卑しいものだと忌避し、直視されることを厭った。
■焉
陸抗の無我な表情に、孫晧は怖れを抱いた。なんの感情の発露も見せない、無機質な存在に、自身の刃が届かない人間であると悟った。陸抗が辺境において絶大な指揮権を手に入れたのは、このある種の信頼ともいえる、孫晧の恐怖によるものだった。
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