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天命
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■天命
羊祜はことごとく自らの軍略を看破した陸抗の才を恐れるとともに、ただ彼ひとりの手で支えられている呉の趨勢を嘆いた。危険を顧みず敵地に単身訪れ、陸抗との邂逅を果たしたのは、ひとえに彼に強く引かれているためであった。
「君の才は失われるには惜しいが、それでも私(晋)と相対するというのならば、どうかその滅びの天命に抗ってくれ。」
そんな羊祜の思いは陸抗に正しく伝わり、彼の怒りを買った。陸抗にとって羊祜の嘆きは呉を侮辱されるに等しいことであり、陸家孫家の血を引く名士であるという誇りを傷つけるものだったのだ。
■羊陸之交
しかし陸抗は決して羊祜を憎く思っているわけではない。むしろその徳義に惹かれてすらいる。だが、それを認めてしまうことは、すなわち互いの善を競い合うという静かな戦に敗れることに他ならない、と陸抗は考えており、あくまでも敵として羊祜と友好を図るという姿勢を崩さなかった。
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